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第一回 普段見ているもの

自宅から事務所まで時々、歩いている。いつも見ているまわりのものや風景でも、ちょっとした変化に気づかないことが多い。しっかり目を凝らして見れば、細部まで見えてくるが、いつもいつもとはいかない。そんななかで本当に私の心の眼に触れたものは大切に残している。

それにしても私たちの日常の風景が大きく変わろうとしている。情報がスピード化され、ものの変化も著しい。本当に自分が大切にしたいものや風景、さらに言えば人さえ、年々私には少なくなっている気がする。

年を重ねると物事の本質が見えてくる。それにもつながることだが、世の中自体が、人として当然の正しいことができない。そんなことがあまりにも多いのは淋しい限りだ。私自身、外に出向くことも若いころのように精力的にはいかなくなってきたが、自分に言い聞かせるように今回も長い旅に出ようとしている。

表現者なら当然だが、つねに前に前にと進まなければならない。

 

2005年12月16日